身支度を終え、テントやキャンプ用品を押し込んだずた袋、振り分けバッグをCB400SSに積載。エンジンをかけてすぐに発進して、いつもの空き地で暖機運転を行った。曇天の空を見上げつつ一服し、4時30分に出発したのだった。
環七から国道6号を左折。先週点検の後給油したので、ガソリンはほぼ満タンだ。東京都葛飾区から千葉県松戸市に入り、千葉県を一気に走り抜けて茨城県取手市に入った。牛久市を通過する際には心の中で、マシュマロ君おはよー、と挨拶した。(誰だよ)
快調に流れる水戸街道を、ガンガン走って、グングン距離を伸ばし、朝から何も食べていないのでお腹がグーグー鳴った。(なんじゃそら!)
俺は水戸まで一気に走った。
市毛十字路を左折して県道38号に入り、県道38号と国道349号の交差点にあるコンビニで菓子パンと暖かい缶コーヒー(天気が悪いから走り続けると寒いのだ)を買って朝食とした。
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国道6号の水戸までは、ツーリングと言うよりは移動って感じなので、ガンガン走って、グングン距離を伸ばし、お腹がグーグー鳴ったわけだが、今やお腹のグーグーは解消したし、国道349号に入ってから景色が良くなって来た。俺は移動モードからツーリングモードに切替えた。
穏やかに蛇行する田舎道を楽しみつつ走り、信号待ちで写真を撮ったりしながら、まったりと進んだのであった。
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そろそろトイレ休憩が必要だ。そう思いながら走っていると、大菅鉱泉の少し先、国道349号の左側に道の駅「さとみ」があった。俺はおもむろに左の方向指示器を出した。
駐車場にCB400SSを停め、エンジンを停止してグローブをはずした。ジェベルが駐車場に入って来て、俺のCB400SSの隣に停まり、俺とジェベルのライダーはほぼ同時にヘルメットを取った。そして、これまたほぼ同時にお互い「こんにちは」と言ってぺこっと頭を下げた。二人の動作があまりにも息が合っていたので、俺は思わずにやりとした。ジェベルのライダーには、気持ち悪い奴だと思われたかもしれない。
トイレを済ませ、缶コーヒーを買ってベンチで一服。ツーリング中は、休憩のたびに缶コーヒーを飲んでる感じだ。俺は道の駅の脇を流れる「里川」やその向こうに連なる山並みを眺めながら休憩した。ジェベルのライダーが出発して行き、入れ違いに3人組みのツーリンググループが駐車場に入ってきた。俺はタバコを消して立ち上がり、空き缶をゴミ箱に捨てて出発した。
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俺は道の駅を出発して、国道349号で矢祭方面を目指した。
右側のコンビニから、バイク4台のツーリンググループが出てきて前方100メートル位の場所を、俺と同一方向に走り出した。バイクグループはのんびり流していたようで、俺はすぐに追いついた。信号待ちでバイクグループの後ろに並んでいるとき、別のソロライダーが後方から追いついて俺の右側に停止した。なんとなく気まずい感じだ。
信号が青になりバイクグループは発進した。隣のソロライダーも発進し、俺も発進した。バイクグループは相変わらず抑え目のスピードで前を走っている。俺は少し距離を置いて、バイクグループとソロライダーの後を走った。
さらにこの時点で俺のバックミラーには、多数のヘッドライトが近づいて来る様がうつっていた。10数台のマスツーリンググループだ。彼らはあっという間に追いつき、俺の後方を走った。
かくして、総勢20台ほどのバイク集団が出来上がり、きれいな千鳥走行を構成する仕儀となった。俺はその中段やや前方を走行している。で、俺の感想はこうだ。「なんだこりゃー!」
なんだか変なことになった。俺はコンビニとかドライブインがあったら、そこに入って離脱するつもりで走った。メットの中で「コンビニ・・・コンビニ・・・」とつぶやきながら。
しかしこういうときに限ってそれらのものは見当たらず、左によって先に行かせるかなー、と思いはじめたころ矢祭町付近に差し掛かり、ついに国道349号と国道118号の分岐に到達した。俺はウィンカーを出して右折斜線に入り、直進して国道118号に入るバイクの集団と分かれた。そして一人、国道349号を進んだのだった。あー気疲れした。
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国道118号と分かれてから交通量が激減した。よりいっそう緑が深くなり、人里から離れていく感じだ。俺はゆったりとした気分になって走行した。ツーリングマップルによれば国道349号のこのあたりは、阿武隈高地縦断ルートだ。
俺は秘境のような山間の道を永遠と進んだ。
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そろそろ本気で給油したくなってきたころ、古殿町の市街地にさしかかった。俺は待望のGSを発見してCB400SSを乗り入れ、ガソリンタンクを満タンにした。キャンプ場まで、あと一ふんばりで到着するはずだ。
それにしてもだ。この辺りで昼飯のつもりでいたのだが、食堂や、レストランといった類の店がない。俺はキャンプ場でおにぎりでもたべることにした。コンビニとスーパーに寄り、昼飯用のおにぎりと、夕食用の食材を購入した。
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古殿町を後にして再び人里をはなれた。しばらく走っていると、道の右側の小道に「芝山」と書かれた看板があった。芝山自然公園へは、もう少し進んで県道20号を右折するものだと思っていたが、この道でもいけるのだろう。俺はハンドルを切って小道に分け入った。
道はすぐに未舗装になり、曲がりくねりながら登って行く。結構怖い。俺は車の轍でぐゎんぐゎんしながらも、超ゆっくり慎重に進んだのだった。
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炊事場やトイレがある広場を越えて、さらに未舗装の小道を進んだ。
時刻は12時30分。
出発から236km走って本日の宿営地、芝山自然公園の駐車場に到着した。
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頂上付近の駐車場からさらに隆起する斜面を登れば、キャンプ可能な芝の園地に出るはずだ。俺はエンジンを停止してバイクから降り、ワクワクしながら斜面を登って行った。
かくして、俺はその場所に立った。幾多のキャンプ地でそうして来たように、両足をしっかりと地につけ、誰もいない広大な広場を見渡した。芝の園地の端まで歩き、眼下に広がる阿武隈高地を見下ろした。
芝山自然公園!某Gさん、某Oさんに感謝。
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一度駐車場に降りて荷物を解き、2回に分けて斜面を運び上げた。
誰もいないので、設営場所は選びたい放題だ。歩き回って検討した末、水場の近くのなるべく平らな一角を選んで設営を開始した。
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設営完了。
とりあえず猛烈に空腹なので、コンビニで買ったおにぎりを食べた。
コーヒーを沸かして時間をかけて一服し、あたりを散策した。駐車場の向こうに展望台があるので、登ってみようと思ったのだが、以外に距離があるので途中で引き返した。エンジニアブーツだと歩きにくいし。
テントの傍らに戻り、お湯を沸かしてもう一杯コーヒーをいれた。そして読書をすることにした。子供を1人連れた若い夫婦がやって来て、遠くの遊具でひとしきり遊んで帰って行った。
さ、昼寝でもするか。
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自分の鼻が「フガッ」って鳴る音で目が覚めた。時刻は17時を回っている。俺は夕食の支度を開始した。
本日のメインは、またまたなんちゃってイタリアン。この料理は今回で3回目だ。簡単だし、はっきし言ってうまい。俺は100スキをストーブにかけ、手際よく調理した。そして食った。100スキで作ると美味しさ倍増な感じだ。なんちゃってイタリアンや、コンビニで買ったサラミを食べながら日本酒を飲んだ。(イタリアンに日本酒かよ)
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いつのまにか霧が出てきた。圧倒的なボリュームの白い流体が、さながら生き物のように東の斜面を這い上がって来て、あっという間に芝の広場を占領した。幻想的な感じだが、これがまた結構怖い。なんてったって、山の中に一人ぼっちなのだ。俺は霧の中に白い着物を着た女の人が立っている様子を想像し、ぶるぶるっとなったのだった。
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時刻は18時を回り、太陽が薄ぼんやりとした光を発しつつ、西の林の向こうに沈んで行った。
19時を回ると辺りは急速に暗くなり、やがて闇がおとずれた。都会で生活していると経験することのない、真の闇だ。時間は早いがテントの中に入り、ウィスキーをグイグイ飲んで寝ることにした。外に居ても何も見えないし、寒くなって来たし、何よりも薄ら怖いからだ。俺はテントの中で本を読みながら、短時間でポケット瓶を空けた。幸いすぐに激しい睡魔が襲ってきて、俺はいつのまにか爆睡していたのであった。
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「え?何の音?」
俺は半覚醒状態でそうつぶやいた。その音は、放送を終えた深夜のテレビが発するノイズを俺に想起させた。しかし実際は、テントのフライを叩く雨の音だった。えっ!雨!?うそーーー
携帯で時刻を確認すると、午前3時だ。
昨日の天気予報では今日のいわき地方は一日曇りのはずだ。俺はすぐ止むだろうと推測し、もう一度眠ることにした。しかし、雨は止むどころか、次第に雨足が強くなっている。俺は完全に覚醒してしまい、もはや眠れそうもない。3時30分頃寝袋を抜け出し、テントの中を片付け始めた。雨がひどくなる前に撤収したかったからだ。
前室のレジャーシートに座り、昨日コンビニで買った菓子パンと缶コーヒーで朝食をとった。キャンプ道具を全て、ズタ袋と振り分けバッグに押し込んだ。レインスーツを着てテントの外に出て、荷造りの終わったものを駐車場に運び、CB400SSにくくりつけた。後はテントを片付けるだけだ。
駐車場からテントの傍らに戻り、てきぱきと解体した。フライとインナーテントを丸めて収納袋に押し込み、ペグとフレームはスタッフバッグに突っ込んだ。
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撤収完了。
いまや本格的な雨の中、CB400SSを暖気させながら一服。
「安全運転、安全運転」俺は心の中でそうつぶやき、4時50分に芝山自然公園の駐車場を出発したのだった。
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来るときに通った道とは反対側の、舗装された小道を通って国道49号方面に進んだ。市営牧場ごしに見える阿武隈高地の山々が、雨にかすんで絵画のような風情をかもし出していた。
舗装されているとは言え、急な下り斜面のクネクネ道だ。しかも、雨水が川のように流れている。超怖い。俺は低速で慎重に進んだ。
クネクネ道を下りきって県道20号を左折。国道349号を右折して、国道49号に出た。
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国道49号を黙々と進み、国道6号を右折。勿来海岸を越えて福島県いわき市から茨城県北茨城市に入り、ドライブインの駐車場にCB400SSを入れた。帰路の写真が1枚もないのは寂しいので、写真撮影だ。予想していた通り雨は段々ひどくなり、いまや文句なしのどしゃ降りだ。
引き続き国道6号を黙々と進む。東海村のあたりでCB400SSのガソリンタンクを満タンにし、ついでにトイレを済ませて喫煙所で一服。この後はノンストップで一気に帰るつもりだ。
水戸、土浦、牛久、取手を越え、ようやく千葉県に入った。相変わらず強い雨が、安定した感じで降り続いている。東京に近づくにつれ、段々交通量が増してきた。新葛飾橋を渡って東京都に入った。金町の混雑を我慢して通過し、環七を左折。
午前10時50分。
芝山自然公園を出発してから245km、昨日の朝自宅を出発してから481km走って無事に帰宅したのであった。
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