予定通り午前2時起床。昨日の朝に比べて、大分暖かい。とは言え、俺は革ジャンを着て出発することにした。日が昇る前に1時間以上走ることになるし、東京や埼玉は9時頃まで日が差さないと天気予報が伝えていたからだ。日中はかなり気温が上がるようなので、薄手のジャケットをバッグに押し込んだ。
2時40分頃出発の準備が整い、俺はCB400SSのカバーとロックをはずしてエンジンを始動した。アイドリングを高めに調整してチョークを戻し、速攻で発進。朝というか夜中なので、周りの民家はまだ寝静まっているからだ。回転数を上げないようにいつもの空き地まで進み、一服しながらゆっくりと暖気した。回転が安定してきたところでタバコを携帯灰皿でもみ消し、俺は明けやらぬ空の下に走り出したのであった。
国道4号を北上。出発から一時間強走り、道の駅「ごか」で一回目のトイレ休憩をとるころ、空が薄ぼんやりと明るくなってきた。
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道の駅「ごか」を出てすぐのところにあるセルフスタンドで給油し、俺は北上を続けた。東の空に雲の切れ目ができて、急激にあたりが明るくなった。曙光は短時間の内に見る見る赤みを帯びていき、やがて劇的な朝焼けが筑波山の向こう側に出現した。その光はさながら、場末のスナックの怪しい照明灯のような美しさだ。(どんな例えだよ)
恐らく、今までに俺が見た朝焼けの中で、最も美しいと言っても過言ではないが、ちょっと言い過ぎかも知れないけれど言い得て妙だ。(まただよ)
小山市に入った辺りで太陽が顔を出し、俺のテンションは急上昇した。ほとんど車が走っていない、広い6車線道路。燃えるような色の太陽光を右半身に浴びて、俺は走った。
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宇都宮を超えた辺りのコンビニで朝食をとり(以前、膀胱破裂直前に飛び込んで難をのがれたコンビニだ。そのことに感謝)、矢板の辺りで県道30号に入った。
この辺りで5時40分位。今や青空に綿菓子のような雲がまばらに浮かび、爽快な朝の陽光が県道沿いの田園に降り注いでいる。
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塩原町と黒磯市の境にかかる、塩那橋の辺りから涸れた谷沿いに北西の方角を望むと、塩原の山並みに低い雲が絡まりついて幻想的な雰囲気をかもし出していた。
県道30号から県道17号を左折し、俺は那須のメインストリートを那須湯本方面にんだ。
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那須の並木道を超えて那須湯元温泉を通過した。道は那須岳に向けて、徐々に登り勾配が強くなりつつある。少し走ると草木が絶えて岩肌がむき出しとなった、殺伐とした光景が目に入ってきた。史跡「殺生石」に到着だ。時刻は午前6時50分。出発からここまでの走行距離は173kmだ。朝早く出発すると、ストレスなく走行できていい気分だ。俺は無料駐車場にCB400SSを停め、木道を登っていった。こんな感じの殺伐とした風景は基本的に好きだが、木道の左側の大量のお地蔵さんがなんだか怖い。あたりには、強烈な硫黄の匂いが立ち昇っている。
殺生石とは要するに溶岩で、周辺から噴出するガスによって動物が死ぬことから、昔の人が殺生石と名付けたらしい。大量のお地蔵さんは、この地で親不孝の罰で焼け死んだ、教傅住職の供養のためのものらしい。
俺はちょっとした観光とトイレを済ませ、殺生石を後にしたのだった。
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殺生石を出て、県道17号を1km程走ると那須高原有料道路、別名ボルケーノハイウェイの湯本料金所だ。
俺は料金所の脇で停止した。
料金所のおじさんが「これ何CC?」と言った。
「400です」俺は答えるた
「じゃあ260円です」
俺は焦って右手のグローブをはずし、ウェストバッグの中を引っ掻き回した。それというのも、俺のインターネット事前調査によれば、ボルケーノハイウェイの料金は出るときに徴収されるという情報を得ていたからだ。俺はどうにかウェストバッグから財布を引っ張り出し、300円取り出しておじさんに渡した。
おじさんはおつりとレシートを俺に渡しながら「天気がいいから、オートバイだといいね」と言った。俺はおつりとレシートを無造作にウェストバッグに突っ込み、グローブを装着した。そしておじさんに「どうもー」と挨拶して発進した。
料金所を出てすぐの分岐を左に入ると、すぐに展望台の駐車場があった。俺はCB400SSを停車し、那須や塩原の景色を眺めた。
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展望台から那須岳に向けて走る。勾配はさらに急になり、カーブも段々タイトになってきた。しかし猛烈に楽しい。カーブを抜けてバイクが谷川に向くと、真っ白な雲が浮かんだ美しい青空が視界いっぱいに広がった。バイクが山側にむくと正面にバーンと見えるのは、やはり美しい青空をバックに雲を纏った茶臼岳だ。
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市営駐車場を超えて暫く走り、那須岳ロープウェイの山麓駅に到着した。ここまでくると風が強くて、結構寒い。革ジャン着て来て良かった。まだ7時30分位だが駐車場はいっぱいになっていて、登山客と思われる人たちがたくさん歩いていた。
山麓駅からさらに登って峠の茶屋に行ってみたが、まだやってなかったのでそのまま引き返した。俺は急な下りのくねくね道を、慎重に下りて行った。市営駐車場の分岐を左に入り、那須高原自然の家の脇を通って料金所に向かった。
先程の料金所を通過して登ってきた道を戻り、殺生石手前の小道を左に入った。
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那須湯元温泉源泉の共同浴場「鹿の湯」に到着だ。時刻は8時10分位。今回は温泉の予定はなかったのだが、雰囲気が良さそうな共同浴場なので寄ってみた。俺の振り分けバッグにはこんなときの為に、いつでもお風呂セットが入っているのだ。
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受付で入浴料金400円を払って入場し、通路にあるコインロッカー(200円戻ってこない)に貴重品と革ジャンを押し込んだ。脱衣所で衣服をぬいで籠につっこみ、タオルを持って浴室に入った。浴室には既に、地元の人と思われる中高年の方々が沢山いた。何故地元の人と思うかといえば、駐車場に停まっていた車の殆んどが地元ナンバーだったし、大声で交わす世間話のイントネーションがいかにも栃木弁っぽいからだ。
浴室は建物の外観と同じく、床も壁も古びた木材で出来ていた。2メートル四方位の、やはり木製の浴槽が6つあり、それぞれ41度、42度、43度、44度、46度、48度に温度が調整されている。俺は掛け湯をして、空いている浴槽に浸かった。白濁した湯に体を沈めて目を閉じ、天窓から差し込む日の光を、瞼の裏で楽しんだのだった。
鹿の湯は那須湯本温泉の源泉で、泉質は酸性・含硫黄−硫酸塩温泉(硫化水素型/酸性低張性高温泉)だ。神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病などに効能があり、温泉成分が強いので長湯をしてはいけないそうだ。
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鹿の湯を後にして県道17号を戻り、本日2度目の給油。ガソリンタンクを満タンにして、那須インターから東北自動車道に乗った。
この時点で時刻はまだ9時過ぎだ。東北自動車道の東京方面は、ガラガラに空いていた。俺は安全運転で順調に走り、大谷パーキングにCB400SSを入れた。
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で、本日の昼食(まだ早いけど)はパーキングエリアの掻き揚げうどんだ・・・・・
そんなこと言ったって好きなんだからしょうがない。(何も言ってねーよ、っていうか写真いらねーだろ)
一服してトイレを済ませて、大谷パーキングを出発。、残りの約60kmも快調に走り、浦和インターで高速を降りた。
午前11時55分。出発から368km走って、無事に帰宅したのであった。
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