道が混んでる。3月の最終土曜日、世の中年度末なのだ。しかし、今日は目的地が近いので焦る必要はない。多摩川を越えて神奈川県に入っても道の混雑は続き、俺は車の列に並んで大人しく走った。
川崎市から横浜市に入り、長津田のコンビニでトイレ休憩と朝食だ。出発からここまで、1時間45分走って45km進んだ。時速に換算すると約25kmだ。フレンチトースト、ジューシードッグとワンダモーニングショットを購入。隣りの敷地の桜を眺めながら駐車場で食べた。
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厚木を超えて、片側1車線となった国道246号を地道に進み、伊勢原市、秦野市、大井町、松田町を通過して山北町に入った。俺は「宮地」っていう交差点を右折し、山北駅の方に行ってみた。山北駅の周辺で桜まつりをやっているとWebから知識を得ていたのだ。
駅からちょっと離れた場所にCB400SSを停め、満開の桜を眺めながらちょっと散歩してみた。見物客が結構大勢いて、みんな桜を眺めたり写真を撮ったりしながら、のんびりと散策していた。
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山北駅の周辺から国道246号に戻り、清水橋の交差点を右折。道の駅山北を超えて暫く少し走ると丹沢湖だ。俺は湖畔の駐車場にCB400SSを停め、湖を眺めながら一服した。
近くに停まっていたバイク(名前が分からない)のライダーが近づいて来て、「キャンプですか?」と言った。俺は「はい、そうです」と答えた。ライダーは「大分暖かくなってきたから、いいですね。」と言い、トイレの方へ歩いていった。俺は携帯灰皿でタバコを消して出発した。
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時間は11時30分だ。そろそろ昼食にしよう。駐車場を出て少し走ると、落合館っていう御土産やさん兼食堂があった。俺はCB400SSを駐車場に停めて店に入り、ざるそば(500円、550円だったかも)を食べた。店の人に「この辺にスーパーあります?」って聞いたら、「スーパーは山北駅の方まで行かないとないです。小さい食料品店なら246に出る手前にありますけど。」と言う。246の手前の商店は来るときに見た。キャンプ場にテント張ったら、その商店に行ってみることにしよう。
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店を出て暫く走ると、県道76号沿いの左側に「奥箒沢山の家」の看板が見えて来た。
12時15分。出発から120キロ走って本日の宿営地、「奥箒沢山の家」に到着だ。
受付の前にCB400SSを停めたら、建物の中からおばあちゃんが出てきた。俺が「バイク1台で一人なんですけど。」と言うと、おばあちゃんは「テント?」と聞いた。「そうです。」と俺が答えると、おばあちゃんはサイトに続く通路の鎖をはずし、「好きなとこに張って下さい。」と言った。俺はウェストバッグから財布を出し、おばあちゃんの次の言葉を待った。しかし、おばあちゃんは無言で俺を見ている。俺とおばあちゃんは、しばし見つめ合った。そして俺が言葉を発した。
「あの、いくらですか?」
「ああ、そうか。オートバイで一人だから・・・800円くらいもらっとこうかね」
かなりアバウトだ。俺はおばあちゃんに800円渡した。おばあちゃんが「夜は管理棟に誰もいなくなっちゃうけど、トイレの鍵はあけとくから」と言った。俺はバイクでサイトに移動し、てきぱきと設営を開始した。
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設営完了。久しぶりに張り綱を張った。結構風が強いのだ。
奥箒沢山の家は丹沢湖の上流の渓流沿いにあり、丹沢湖周辺のキャンプ場の中でも、最上流部の辺りに位置している。周りには民家がなく、山奥って雰囲気だ。テントサイトは20張り位の規模の、こじんまりとしたフリーサイトだ。キャンプ場というよりは駐車場って感じだが、山の中にしては開放的な雰囲気で、それはそれでいい感じだ。
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設営を完了して一服し、食料の買出しに出掛けた。山道を降りて丹沢湖を超え、国道246号に出る手前の商店に行ってみた。インスタントラーメンともやしを購入。ポテトのベーコン巻きっていうのがあったのでそれも買った。取り合えず店を出て、国道246号を右折し、ツーリングマップルに記載されているコンビニに向かった。2Lのミネラルウォーター、ワンカップ大関、ブラックニッカのポケット瓶、酢いか、明日の朝食用のロールパンを購入した。
一度、キャンプ場に戻って食料を下ろし、入浴セットを持って再度出掛けた。日帰り入浴施設、「ぶなの湯」に温泉に入りに行くのだ。
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「ぶなの湯」はキャンプ場から丹沢湖の方に、3、4キロ程の左側の小道を入ったところにある。丹沢湖の方から来ると右側だ。(あたりまえだよ)
入り口がちょっと分かりにくいが、俺はさっき買い物をしに行ったときに場所を確認しておいたので、迷うことなく到着することができた。
俺は大人一人2時間で700円(1日券だと1000円)の券を買って入場した。洗い場が満員だったので、掛け湯をして、まず露天風呂に入った。西丹沢の自然を眺めながら、のんびりと入浴したのだった。
ぶなの湯の泉質は、アルカリ性単純温泉。ペーハーが高いのが特徴で、神経痛、関節痛、消化器病などに効果があるらしい。
風呂からあがって喫煙所で一服して、汗が引くのを待った。自動販売機で缶ビールを買い、ウェストバッグに入れてキャンプ場に戻った。
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キャンプ場に戻り、酢いかをつまみながらビールを飲んだ。温泉入った後にキャンプ場で飲むビールは最高だ。それにしてもだ。今の時間は15時45分だが、相変わらず俺の他にキャンパーはいない。対岸の西丹沢自然教室の駐車場もからになっている。っていうか、管理人のおばあちゃんも既にいなくなっちゃってるし、このキャンプ場に俺一人だ。っていうか、この山奥で、半径数キロに渡って俺一人かもしれない。だいじょぶか?俺。
ビールを飲んで、読書してたら、眠たくなってきた。俺はちょっと昼寝をすることにした。寝てる間に他のキャンパーが来るかもしれない。
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1時間ほど昼寝をして起きた。
一人ぼっちだ・・・・・
取り合えず夕食にしよう。
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今日のディナーはさっき買ったポテトのベーコン巻きと、もやしだ。もやしはバターで炒め、醤油をたらした。俺は飲み、且つ食べた。バターと醤油が焦げた感じが、香ばしくてうまい。ポテトのベーコン巻きを5本平らげ、もやしは2度にわたって炒め、食べた。バターと醤油が焦げた感じが、香ばしくてうまい。(さっき聞いたよ)
既に日本酒はウィスキーに移行している。俺はさっぽろ一番塩ラーメンを作り、残ったもやしを入れて食べた。
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ラーメンを食べ終わり、コーヒーを沸かした。俺はコーヒーをすすり、ウィスキーをちびちび飲んだ。今や、日が落ち、キャンプ場を闇が包みつつある。心配されたお化けの恐怖は、いまのところアルコールが打ち消している。そのことに感謝。むしろ一人きりの静寂と、深まりつつある闇を楽しむことができた。我ながら意外だ。
キャンドルランタンの明かりを眺め、さまざまなことを考え、質問し、自ら回答し、納得した。普段考えもしないような考えが浮かんだり、ちょっとした思い付きがとてつもなく素晴らしいアイデアに思えたりした。俺が言うところの、アルコールと、夜のキャンプ場の静けさがもたらすファンタジー。しかも、過去最強のファンタジーだ。俺はそれを楽しんだ。
ウィスキーを飲み終わり、瞼を開けているのが困難になって来た。俺はテントに入り、寝袋にもぐりこんだ。
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闇は去った。夜中に大きな物音がしてビビッたが(なんだったんだろう)、無事に朝を迎えることができた。俺はテントの中を片付けて、外に出た。日曜の朝5時40分。天気はうす曇り。思いの他寒い。しかし、気持ちのいい朝だ。俺は川原におりて、深呼吸をした。
コーヒーを沸かしてロールパンを食べ、タバコを一本取り出して火を付けた。そしてキャンプ場と周囲の自然を、改めて見渡した。さて片付けるか。
7時15分。俺は撤収作業を完了し、誰もいないキャンプ場を出発したのだった。
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朝のキャンプ場から、丹沢湖までの県道76号はまーったく車が走っていない。人っ子ひとりいない県道を俺は走った。静寂と闇が夜のファンタジーなら、誰もいない県道は朝のファンタジーだ。俺はそれを楽しんだ。
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丹沢湖畔にCB400SSを停めた。湖面に波がなく、周囲の景色を鏡のように映している。俺は朝の、誰もいない丹沢湖を眺めながらゆっくり一服して出発した。この後は都内まで一気に走るつもりだ。
丹沢湖を後にして、国道246号を左折。昨日とは打って変わって今日の国道246号はがらがらだ。
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多摩川を渡って都内に入り、環八を超えたところで、一度CB400SSを道端に停めて休憩。自動販売機で、缶コーヒーを買って飲みながら一服した。キャンプ場からここまでちょうど2時間。無茶苦茶いいペースだ。再出発して環七を左折。日曜の朝の環七は空いている。俺は環七も一気に走った。
午前10時。キャンプ場を出てから114キロ、昨日の朝出発してから285キロ走って無事帰宅したのだった。
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