5時30分起床。支度とキャンプ道具の積載を一時間で終え、俺は先週NAPSで購入したYELLOW CORNの冬用ライディングジャケットをユニクロの長袖Tシャツの上に羽織った。冬用ではまだ暑いかなと危惧したが、今日から寒気が入り込んでいるらしく、早朝の外気は思いの他冷えている。ジーンズの下に股引を履いたのは正解だった。
俺はCB400SSのチョークを引いてエンジンをかけ、ヘルメットとグローブを装着し暖気はせずに出発した。我が家の周辺は住宅密集地なので、早朝の暖気運転は気がひけるのだ。低速で周りに民家がない場所まで移動し、暖気しながら荷物の結束をチャックした。毎度おなじみの手順てわけだ。
荷物の結束はOK。エンジンの回転数も安定してきた。俺はタバコを携帯灰皿でもみ消した。さあ、出発だ。
|
|
環七から国道6号を左折し、水戸方面を目指す。松戸や柏といった駅の周辺では既に混雑が始まっているが、俺はすり抜けずにおとなしく進んだ。利根川を渡って茨城県に入り、取手駅を超えると車が減り、走行がスムーズになって来た。出発から1時間30分。牛久のあたりでコンビニに入り、一回目のトイレ休憩と朝食だ。
今日は朝から薄い雲が空を覆っていたが、雲の隙間から見える青空の面積が段々広がってきた。しかし、思いの他寒い。もう冬用のライディングジャケットでぜんぜんOKだ。今日は春夏用の短いレザーグローブをしてきたので、走ってるとジャケットの袖から冷気が進入し、それが体温を奪う。しかしだ。準備万端な俺は冬用のレザーグローブも内緒で振り分けバッグに忍ばせてある。(誰に内緒なんだよ)
俺はおもむろに冬用のグローブを装着し、ジャケットの袖をグローブの裾でカバーして出発したのだった。
|
|
土浦市、石岡市、小美玉市を順調に走りぬけ、水戸バイパスで距離を稼いだ。那珂川を渡ってひたちなか市に入り、ちょっと走って市毛十字路を左折。と思ったら、通り過ぎてしまった。俺は次の信号で右折車線からUターンし、市毛十字路を右折して県道38号に入ったのである。そう言えば、去年の11月に袋田の滝に行ったときも、この場所で全く同じことやったのを思い出した。人間の業ってやつだろうか。(違うと思うけど)
じゃ、この場所に人知の及ばない力が働いてるってことか。(それも違うと思うよ)
ただ単に、俺が注意力散漫ってことなのか。(OK!)
県道38号を2キロほど走り、国道349号を右折。暫く走ると建物や信号が減り、代わりに緑が増えて一気に田舎の景色になって来た。久しぶりに味わうツーリングの空気だ。刈り入れが終わった田んぼ、なだらかなシルエットの里山、畑仕事の老人。そういった風景の中を、俺は上機嫌でCB400SSを走らせた。俺の体内では蓄積された疲労素やストレスといったものが、何か他の物質に変化を遂げているはずだ。
常陸太田市の辺りで俺はガソリンスタンドに入り、ガソリンタンクを満タンにして国道349号をさらに北上したのである。
|
|
11時を過ぎ、昼飯を食う場所を探しながら国道349号を走り、県境を越えて福島県矢祭町に入る。少し走ると国道349号は国道118号と合流し、国道349号はひがしだて駅の辺りで右折することになる。予定では右折して国道349号を行くつもりでいたのだが、俺は国道118号を直進し、この先にあるはずの道の駅「はなわ」を目指した。そこで昼食を取ることにしたのだ。国道349号の分岐から10kmほど走ると、左側に道の駅「はなわ」の看板が見えて来た。
俺はCB400SSを駐車場の邪魔にならない場所に停めてエンジンを停止した。メットとグローブを脱ぎ、バイクをおりて道の駅のレストランに入った。高速道路のサービスエリアにあるようなレストランだ。俺は空いている店内の窓際の席に座り、ビーフカレーを注文した。ツーリングマップルでルートをチェックしてたらビーフカレーが運ばれて来た。結構なボリュームだ。
|
|
道の駅「はなわ」を左に出て橋を超え、すぐの信号を右折して県道27号に入る。県道27号をちょっとだけ走ると県道242号の分岐があるので左折。県道242号はこれまたちょっとだけ走ると道なりに国道289号になる。この辺りは既に阿武隈高地だ。
周辺のなだらかな山を縫うように国道289号は走る。徐々に高度を上げながら山間のワインディングを走り抜け、「鹿角平観光牧場」の案内板に従って左折。
|
|
12時20分。出発から218km走って鹿角平観光牧場に到着だ。別にここが目的地というわけでもないのだが、この開放的な風景はどうだ。(○○○○さんの、○○県の北海道ってここじゃないかなあ)Webでこの場所を発見し、どうしても一度訪れてみたかったのだ。俺は道端に座って広大な景色をながめ、のんびりと一服したのだった。
鹿角平観光牧場には天文台があり、キャンプもできる。車は乗り入れできないが、広大な敷地のどこでもキャンプできるらしい。ここでキャンプすることも考えていたのだが、今日は地元の子供たちのイベント(バーベキュー大会かなんか)があるようなので、やめにしたのだった。
|
|
鹿角平観光牧場を後にして国道289号を戻る。暫く走ると国道289号は右折になるので、右折して棚倉方面に向かう。ここを直進すると、来る時に使った県道242号だ。国道118号と合流して暫く走り、県道60号を左折して黒磯方面に向かう。県道60号は山間を走る、快適な道だ。程よいワインディングと美しい風景。そして笑っちゃうほど車が走っていない。たまーに、対向車とすれ違うくらいだ。俺はのんびりとCB400SSを走らせた。俺はツーリングでこういう県道を走ると、すごーく嬉しくなっちゃうのだ。
県道60号は福島県から栃木県那須町に入ると国道294号と合流し、またすぐに右に分岐する。国道294号の分岐から5km程走り、県道72号を左折。また5km程走り、県道182号を右折して3〜4km走ると、那須塩原駅の辺りで国道4号に出るので左折。国道4号から国道400号を右折して西那須野塩原インター、ホウライ牧場を越えて会津東街道に入ったのだった。
|
|
15時20分。出発から309km走って本日の宿営地、塩原グリーンビレッジに到着だ。俺は受付でバイクサイトの空きを確認して、料金1,150円(去年来たときは1,050円だったような・・・)を払い、宿泊者名簿に記入して指定されたサイトに向かったのである。
|
|
指定された山サイト1にCB400SSを停め、キャンプ道具を下ろしていると奥のサイトのカップルが「こんにちは」と気持ち良く挨拶しながら通り過ぎていった。バイクサイトの先客はこのカップル一組だけだ。テントがあって人もいるのだがバイクがない。不思議だ。
手早く設営して一服し、場内の日帰り入浴施設「福の湯」に温泉に入りに行く。俺は福の湯の受付で350円払って入場した。脱衣所に入ってライディングジャケット、Tシャツ、ジーンズ、股引(この時期の股引はちょっと恥ずかしい)、パンツを脱いでタオルを持ち、あたかもプールに向かうちびっ子のように喜び勇んで浴室に突進したのである。
福の湯の泉質はナトリウム・カルシウム塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩素泉。100%天然温泉で、神経痛、冷え症、きりきず、やけど、慢性婦人病、動脈硬化症などに効くらしい。俺はゆっくりと、内風呂、露天風呂、サウナを満喫した。寒いときの温泉は最高だ。
サイトに戻ると、となりにテントがひとつ増えている。人もいないし、バイクもないので設営して買出しにでも出かけているのだろう。一番奥のカップルのテントはモンベルのムーンライト3型、おとなりさんのテントはシェラのハーフムーン、俺のテントが小川のステイシーだ。これでダンロップのR-224でもあれば、人気ツーリングテントの品評会だ。それはさておき、とりあえずビールだ。俺は売店で買った一番絞りのプルリングを引き、風呂上りのビールを楽しんだのである。
|
|
ビールを飲んで一服したら、辺りが暗くなって来た。まだ夕方の5時過ぎだが、大分日が落ちるのが早まって来ているのだ。思うに、このキャンプ場が山間部の渓谷沿いに位置すということも、辺りが暗くなる早さと無関係ではないに違いない。俺はキャンドルランタンに火をいれ、宴会を開始することにした。カップの日本酒をあけ、ビーフジャーキーをつまみながら料理の支度をした。
さあ、レシピの時間だ。
奥様。 今日の料理はなんちゃってイタリアンでございます。どうぞメモのご用意を。まず100円ショップのフライパンにオリーブオイルを入れてよく熱し、ベーコンを炒める。火を弱くして輪切りにしたトマトをベーコンの上に乗せ、クレージーソルトを振り掛け、ふたをして蒸し焼きにする。トマトがシナシナになったらとろけるチーズを乗せ、再びふたをして蒸し焼きにする。チーズがとけたら、バジルをふりかければ、簡単で超美味な、なんちゃってイタリアンの完成だ。
早速食べてみる。よっしゃー!!いや、真面目にうまい。ふざけんなよ!っつうくらいうまい。(なにがだよ)カリカリになったベーコンとしなしなのトマト、そしてとろけたチーズが絶妙なバランス。カロリーが高そうなところが難点だが、酒のつまみには最高だ。ベーコンの油と、トマトからでた水分が混ざった汁がこれまたものすげーうまい。ワインを足して塩コショウで味を調えれば、デリーシャスなソースが出来上がるに違いない。
|
|
なんちゃってイタリアンを食べながら酒を飲み、幸せな気分にひたってたら、お隣さんがAfrica Twinに乗って帰って来た。そしてタオルを片手に温泉に出かけていった。俺のテントの前を通りすぎるとき、「こんばんは」と気持ちよく挨拶してくれた。俺も「こんばんは」と気持ちよく挨拶した。
食事を終えて後片付けをし、コーヒーを入れて一服。バーボンのポケット瓶をちびちびやってたら、椅子に座ったまま暫く寝てしまい、大分体が冷えてきた。俺は歯を磨いてキャンドルランタンの火を吹き消し、テーブルと椅子をテントの全室にしまってテントの中に入った。夜7時30分の時点で気温は10度。シュラフカバーや、ライナーを使わなくても全然寒くない。俺はアルファライト700だけで快適に眠りに落ちたのだった。
|
|
朝6時。
テントの中を照らす柔らかい朝の光で目を覚ました。昨日は8時前に寝たので、実に10時間も眠っていたことになる。俺はすっきりと覚醒し、テントの中を片付けて外に出た。そしてすがすがしい空気を味わったのである。
トイレに行って歯を磨き、ロールパンとコーヒーの朝食を取って一服。お隣さんや、奥のカップルはまだテントの中だ。俺は静かで清らかな山間の朝を楽しんだ。
|
|
さて、撤収だ。小物をスタッフバッグに分けて、頭陀袋に押し込んだ。テントはたたまずにまるめてステイシーに付属の袋に押し込み、ポールとペグは頭陀袋に入れた。ステイシーのフライとインナーテントは、ポールやペグを一緒に入れなければ、無造作に突っ込んでも付属の袋にいい感じで収まるのだ。フライとインナーテントは家に帰ってから干すつもりだ。
40分で撤収作業を終え、荷物を後部シートと荷台に括りつけた。ごみや忘れ物がないかチェックして、エンジンをスタート。迷惑になってはいけないので暖気もそこそこにサイトを後にした。
ゴミ捨て場でゴミを分別して捨て、宿泊者カードを受けつけのかごに返した。一応トイレを済ませ、8時に塩原グリーンビレッジを出発したのだった。
|
|
塩原グリーンビレッジを後にして朝の国道400号を走る。この渓谷沿いの国道は沿道の樹林も美しく、早朝に走るとすごーく気持ちがいい。今回はこの空気を味わう為に、わざわざ福島県のいわきや棚倉の辺りから、塩原までキャンプしに来たようなものだ。
|
|
国道400号から、道の駅「湯の香しおばら」の先の信号を右折して県道30号に入る。この道は俺のお気に入りの県道の一つだ。俺は県道30号みたいに空いていて素朴な県道が好きなのだ。西那須野塩原インターから東北道で帰ろうかとも考えたが、やめにした。まだ時間が早いし、お金がもったいないし、下道をとことこ走ったほうが楽しいからだ。
県道30号から矢板の辺りで国道4号に合流。まだ時間が早いので国道4号もスムーズに流れている。宇都宮から小山あたりまでは、ほとんど高速道路のようなバイパスを快調に走る。途中で一回給油してガソリンタンクを満タンにし、スタンドを出たところにCB400SSを停めて一服。春日部あたりから車が多くなってきたが、まあ順調に走り、11時10分、塩原グリーンビレッジを出発してから158km、昨日の朝自宅を出発してから467km走って無事に帰還したのだった。
|
|