3時に起きて3時40分に家を出た。環七のセルフスタンドで給油して出発したのはちょうど4時である。この時間のスタンドは個人のタクシーばっかりだ。
環七から大和町の交差点で国道17号に入る。伊香保に行ったときは新大宮バイパスを走ったが今回は中山道を真っ直ぐ行くことにする。別に深い意味はない。うっかりバイパス方面の分岐を曲がりそこなっただけだ。戸田橋を渡った辺りの信号待ちで、朝帰りと思しき原チャリの若者と並んだ。なんとなくこっちを意識してる。
横の信号が赤になると、案の定原チャリはダッシュし俺の前に出た。俺が追い越そうとすると、原チャリを寄せてブロックするような動きをする。うざい。しかし、どうにか追い越して信号待ちで停まっていると、原チャリが追いついて来た。そして横断歩道の中ほどまで進んで、無理やり俺の前に停まった。かなりうざいが、無視しよう。信号が青になり、また同じように追い越したが、次の赤信号で又も無理やり俺の前に停め、ミラーで俺を見てる。無視しようと思ったが、いい加減うざい。俺はメットのシールドをあげ大声で「あーーーっ!!」と叫んだ。原チャリライダーがこっちを見た。俺は驚愕の表情を装い、原チャリの後輪辺りを指差した。そして原チャリライダーと後輪を交互に見た。原チャリライダーも体を捻って自分のスクーターの後輪の辺りを見た。信号が青になった。俺は心配そうな表情を原チャリライダーに向けながら発進した。原チャリも発進したが、今度はダッシュしない。GNのミラーで見てみると、原チャリライダーはスクーターを停車し、後輪の辺りを覗き込んでいる。「ばっかがみるー♪」ってやつだ。帰って、しょんべんして寝なさい。
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今日は結構距離を走るので、時間にあまり余裕がない。17号をひたすら走って、神流川を越えて群馬県に入り、高崎駅を越えたあたりで県道25号を左折してグングン北上する。県道25号も一気に走り、渋川の辺りでまた国道17号と合流。17号は高崎や前橋のあたりで大きく回り込むのでショートカットしたのだ。17号と合流してちょっと走り、出発から3時間弱でコンビニに入り朝食とトイレ休憩。
群馬県は予報通り天気が悪く、気温も低い。この辺りの人達は普通に冬物の上着を着ている。行く手の山々は激しくガスっている。さあ、いよいよ三国峠だ。俺はジャケットの下にフリースを着込んで出発したのである。
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沼田、月夜野を越えてみなかみ町に入り、猿ヶ京の手前の赤谷湖にGNを停めて一服。ほとんど真冬のような装備だが、この辺まで来るとそれでも寒い。今にも雨が降りだしそうだ。っていうか、メットのシールドも地面も霧で既に濡れている。
赤谷湖は昭和33年に、治水の為に建設された相俣ダムが形成する人造湖だ。水面の面積は約1平方?、湖面の標高は約560mである。湖底には、生井集落や三国街道関跡・笹の湯温泉なとが水没し、新たな湖畔に移された。湖畔には国道17号線が通り、その脇には移転して出来た猿ヶ京温泉の、大きな旅館やホテルが建ち並んでいる。釣りやボート遊びなどができるらしい。
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赤谷湖を後にしてちょっと走ったら、とうとう降り出した。俺はGNを停め、レインスーツを着込んだ。ツーリングマップルによるとこの辺りは紅葉スポットである。まだ紅葉には早いようで、色付き始めといったところだが、雨でしっとりした感じで美しい。
この辺りから三国峠に向けて、カーブが連続するようになる。景色は美しいのだが、見てる余裕がない。雨も本降りになって来た。高度を上げながらいくつものカーブを抜けて、ようやく三国トンネルに差し掛かったのであった。
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国境の長いトンネルを抜けると、新潟県であった。
舞踏研究家で文筆家の島村は、妻子を東京において夜汽車で湯沢温泉を訪れ、土地の芸者、駒子と出会う訳だが、サラリーマンでなんちゃってライダーの俺は、妻を東京においてGNで上越国境を越え、関東・甲信越を制覇しちゃったのである。ぱんぱかぱーーーんだ。
三国トンネルを抜けたら、曇ってはいるが雨は振っていない。走るにつれ道路も乾いてきた。目的地、街道の湯まであとひとふんばりだ。
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三国トンネルから5km程走ると、苗場だ。別に意味はないが、苗場プリンスホテルの前で写真を撮ってみた。雪はないが、スキーリゾートって雰囲気でアルペンな感じだ。久しぶりにスキー行きたくなってきた。GNじゃむりか。
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苗場からちょっとしか走ってないのに、文句なしの快晴になってしまった。ウェザーニュースのサイトで、群馬県は天気悪いが、新潟県は快晴だと書いてあったがその通りだ。振り返って苗場方向を見ると、低く雲が立ち込めている。気候って山一つ越えると別もんなんだなあ。
快晴の中、GNで初めて踏みしめる新潟県の道路を気持ちよく走っていると、国道17号沿いの右側に、街道の湯の看板が見えてきたのである。
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午前9時20分。出発から5時間20分、198km走って「三俣細越温泉 街道の湯」に到着である。いやー、長かった。よく頑張った。えらいぞ!俺とGN!
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駐車場にGNを停め、入り口の自動券売機で500円の入湯券を買って受付に渡して入場する。ここの施設は素朴で、こじんまりしていて、地元の共同浴場っていう感じだ。スキーシーズンの夕方は激しく混雑するらしいが、今は地元の人らしきお年よりが2人入っているだけだ。俺は脱衣場で服を脱ぎ、貴重品をロッカー(100円、戻ってこない)に入れて浴室に入ったのである。
シャワーで体を流し、まず露天風呂に入る。くーーーっ!!体が冷え切ってたのでじーんとくるね。気持ちよすぎる。快晴の空や、遠くの山並みをみながら、最高の気分で露天風呂を独り占めなのであった。
三俣細越温泉のお湯は無色透明だ。泉質は、単純温泉(弱アルカリ性・低張性・高温泉)で、源泉の温度は46.3度だ。筋肉痛、神経痛、打ち身、慢性消化器病などに効くらしい。源泉掛け流しではなく加水、循環ろ過しているらしい。そういえばなんとなく塩素臭がするが、気持ちいいからいいのだ。気にしない。
湯から上がって、コーヒー牛乳を一気飲みし、街道の湯を後にしたのである。
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帰りは来た道を戻る。苗場を越すとまた天気が悪くなって来て、気温も下がってきた。こうなることは分かっていたので、湯冷めするといけないので十分着込んである。レインスーツのズボンもはいているので、降って来たらレインスーツの上だけ着ればいい。準備万端で再び三国峠に挑んだのである。
三国トンネルを抜けるとやはり雨だ。路面が濡れた、下りの連続カーブを抜けていく。幾つ目かの左カーブでそれは起こった。俺はカーブの手前で3速までシフトダウンし、十分にスピードを落とした。カーブに入り序所にアクセルを開ける。カーブの出口は見えていたし、全く不安なスピードではなかった。しかし、まさにカーブをぬけきるその瞬間、後輪がズリッとすべり、左の路面が急激に近づいてきた。一瞬のできごとだが、俺は妙に冷静に、「あ、こける。対抗車いなかったな。」と考えていた。次の瞬間俺はGNと一緒に濡れた路面を滑っていた。なかなか止まらない。すべりながら頭を上げ、対抗車が来ないか見ていた。妙に冷静だった。長い時間すべっていた気がするが、GNは対抗車線、俺はセンターライン上でどうにか止まったのである。
後続車がやって来て止まり、ドライバーが「だいじょぶですかー?」と声を掛けてくれた。俺は立ち上がり「大丈夫です。済みません。」と答えた。車は発進し、俺はGNを起こして端に寄せた。ダメージをチェックしてみる。左前のウィンカーレンズが割れ、シフトペダルが折れ曲がっていて、左のグリップとステップが削れている他は無事だ。自分はどうか、レインスーツのズボンとジャケットがちょっと破けてる。左のひじと左の膝を打ったようで、押すと痛いが、あとは大丈夫そうだ。こんなもんで済んで良かった。自分が痛い思いをするのはもちろん避けたいが、対抗車が来てたらすごい迷惑を掛けていたところだ。
シフトペダルの曲がりを修正していると、ソロのライダーが通り掛かり、「どうしました?大丈夫ですか?」と声を掛けてくれた。俺は「大丈夫です。ありがとう御座います。」と答えた。なんか嬉しかった。
シフトペダルの曲がりをどうにか蹴って直し、一服して気分を落ち着けて再出発した。気をつけて帰ろう。もうこけないぞ。
慎重に峠道を下りきり、沼田市のスタンドで給油。県道25号のショートカットは使わずに国道17号を通ったら、お祭りをやってて激しく混んでる。失敗した。深谷バイパスから熊谷バイパスに入り、非難所にGNを停めて一服。その後もひたすら走り、国道16号の手前で渋滞したが、すり抜けずに進む。新大宮バイパスから中山道に合流し、大和町の交差点で環七を左折して、午後4時15分に無事帰宅したのである。
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